この日、数年ぶりにカレイ釣りに出かけた。場所は高島と白石の水道。朝の冷え込みで、
走島も宇治島も大飛島も下が消えて、珍しい浮島現象(蜃気楼)が起きていた。ラッキー!
本命のカレイ2匹とキス・ギザミなどを釣った後、根掛かりを無理に引くと何かが付いてくる。
「ゲゲゲ!なんだこりゃぁ?気持ちわる〜!」岩礁でよく釣れるホヤの様な胴体に、魚のヒレ
の様なものが幾重にも重なり、ヒレの先端には固いトゲが出て、ヒレの間には数匹のちっこい
カニが隠れている。岩にくっついたままなのか?動き回る動物なのか?見た事も聞いた事も
無いから、ひょっとしたら新種の生物かも知れない。その夜、インターネットで調べてみる。
名前が解らない、何の仲間かも解らない今回のケースでは、インターネットは役に立たない
物だと知る。カトさん曰く、「そがーなん昼釣りならなんぼでも釣れるで、わしゃカニアパート
とか砂チンボとか呼びょーるがの。」 ガッカリ!この時点で新種の発見者の夢が消えた。
福山大学生命工学部海洋生物工学科にメールで写真を送ったら、丁寧な返事をいただき
スッキリ解決しました。嶋田さん山岸さんありがとうございました。以下メールの内容です。
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ウミエラの一種であると思います。イソギンチャクやサンゴの仲間で腔腸動物とよばれる動物門に
所属します。太古から形態にあまり変化のない動物で、5億年前のカンブリア紀の海底にもよく似た
形の動物がいたことが化石の研究でわかっています。写真左側の赤い舌の様な部分を海底の泥中
に差し込んで直立しています。黒い房状の部分が鰓に似ているのでウミエラとよばれますが、この
部分はイソギンチャクのような触手を持つポリプが沢山集まってできており、海流でひらひら動いて
接触したプランクトンなどを触手でとらえて捕食します。普通は数十メートルの深いところにすんで
いますので、なかなか出会えない動物です。ホルマリン固定して保存することを勧めます。(そんな
つもりは・・・)水族館にでも寄付されたら喜ばれると思いますが。(福山大学で引き取ってくれる?)
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分類 :刺胞動物門>花虫鋼>八放サンゴ亜鋼>ウミエラ目>トゲウミエラ科>トゲウミエラ
ウミエラの種類は多く、このような地味な種類の記載が少なく、ウミエラなのか?トゲウミエラ
なのか?はっきり確信が持てない。通常昼間は鰓が閉じて縮こまっていて、夜間だけ開いて
捕食するそうだが、透明度の低い瀬戸内海では昼も開いているそうだ。それで昼に釣れる!
カニの子だと思っていたのは、ウミエラに共生する「ウミエラカニダマシ」というヤドカリの仲間
だ。カニアパートじゃなくて「カニダマシアパート」だったのだ。ウミエラカニダマシもウミエラの
種類に合わせ、色・形が様々で、何故か瀬戸内の海洋動物は全て地味なんだね。
私達の海の底には、こんなのが林のようにニョキニョキ生えていたんだね。知らなかった!
正体がわかった事だし次なる疑問が・・・・・ひょっとしたら誰も味わった事のない珍味かも?